放射性物質が付着している泥は落とし、皮もむく。水にしばらくつけてから洗う。放射性物質は水や酢に溶けこむ性質を持っているので、おひたしや酢漬けもお薦めの方法だ。
放射性物質が体内に入りこむ「内部被曝(ひばく)」。これに詳しい白石久二雄さん(元・放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター被ばく線 量評価部内部被ばく評価室長)は以下のように説明する。「放射性物質はいったん体内に入りこむと、排出されるまで放射線を出し続け、組織や遺伝子を攻撃す る。特に細胞分裂が盛んな骨髄(こつずい)、生殖器、小腸粘膜、目などは放射線の影響を受けやすいとされる」。内部被曝を最小限に抑えたいのは、このため だ。
国は汚染した食品を流通させないよう、原発事故以降に暫定規制値を決めたが、「暫定規制値はあくまでも緊急時対応で決められた数値。健康への影響 を考えれば、原発事故が収束し、この値を下げることが求められるのはいうまでもない」と白石さん。規制値は、健康に問題なしとされる年間被曝量をもとに決 定され、この値をオーバーした食品には出荷制限などの措置がとられているものの、検査をすり抜けて汚染食品が流通する事態も発生している。
漠然とした不安を抱えているよりも、自分の手でできることはやっておいた方がいい。
洗う、ゆでる、酢につけるなど、身近な調理法と除去効果をまとめた冊子(次ページデータ)の作成に関わった放射線医学総合研究所研究基盤センター 長の内田滋夫さんは、「野菜は、まず表面に付着した放射性物質を丹念に洗い流すこと。内側に入りこんだ放射性物質も、ゆでることにより染みだすので、ある 程度除去が可能」という。
食材の内側に入りこんだ放射性物質はどうすればいいか。「セシウムは酸に溶けこみやすい性質を持っている。小さく切って表面積を増やし、酢に数時 間つけ、つけた酢は取り除く。あるいは煮て、煮汁は食べないようにする。魚は内臓や骨に放射性物質が集まるのでこの部分を食べるのは控えた方がいい」と白 石さん。これらの基本的な方法を組み合わせれば、除去率をさらに高められそうだ。
放射性物質を取り除く方法
(1)食材を選ぶ厚労省や各自治体がウェブ上で随時更新している食品のモニタリング結果をこまめにチェックしよう。そのうえで自分の中での判断基準を決め、産地や食品を選ぶようにするといい。(2)水に浸けて洗う「土壌中の放射性物質は土やほこりとともに野菜に付着している可能性が高い。水に溶けやすいので、よく洗うこと。15分ほど水につけてから洗えば、表面の汚染をかなり取り除ける」と白石さん。(3)傷の部分は取り除く野菜の除染を研究した金沢大学学際科学実験センターの柴和弘教授は「傷の部分は放射性物質が入りこみやすく、洗っても除去が難しい」という。傷や土付きの根は大きめに取り除き、皮もむこう。(4)酢漬けやおひたしに野菜も肉も、酢漬けにより放射性物質が90%除去できるというデータがある。「葉物はおひたしにする前の下ゆでで放射性物質がゆで汁に溶け出す」と内田さん。
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